「葬儀での適切な言葉をどう選べばよいか悩んでいる」
「相手を傷つけないか不安で、何も言えずにいる…」
「ご遺族とのコミュニケーションを、もっと心温まるものにしたい」
葬儀でご遺族にお悔やみの言葉を伝えることは、心を込めて故人を偲び、深い悲しみに寄り添う大切な瞬間です。
しかし、どんな言葉をかければいいのか分からず、迷ってしまうこともありますよね。
お悔やみの言葉は、単なる形式的な挨拶ではなく、心からの慰めを込めた言葉であるべきです。
そのため、言葉選びを間違えると、意図せず相手を傷つけることもあります。
この記事では、葬儀やお通夜で使うべきお悔やみの言葉を、実際の事例を交えてご紹介します。
マナーや心構えも含めて、どんな言葉をどんなタイミングで伝えれば良いかわかる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
お悔やみの言葉とは、葬儀や通夜で亡くなった方への敬意と哀悼の気持ちを表し、ご遺族の悲しみに寄り添うために贈られる言葉です。
ご遺族にとっては大きな悲しみを乗り越えるためのきっかけや、支えとなることもあります。
だからこそ、お悔やみの言葉は形式的・儀礼的な挨拶ではなく、心からの慰めを込めて誠意をもって伝えることがなにより大切です。その思いを込めた言葉が、どれほどご遺族にとって力強い支えとなるか計り知れません。
お悔やみの言葉をかける場面では、言葉だけでなく、その言葉を伝える姿勢や態度にも気をつけます。
ご遺族と話す際は、落ち着いたトーンで優しく語りかけ、控えめな声で短く丁寧な心からの言葉を選びましょう。不必要な会話は控え、大声や大げさな身ぶり手ぶりで話さない心遣いが大切です。
また、故人との個人的なエピソードや思い出話があれば、お悔やみの言葉に付け加えることで、ご遺族の慰めになることもあります。
もし、ご遺族が悲しみに深く沈んでいる場合、無理にお悔やみの言葉をかけなくても、深いお辞儀だけで十分です。ご遺族の心情を最優先に考え、タイミングや言葉を選びましょう。
お悔やみの言葉には、避けるべき話題や表現がいくつかあります。
故人の死因やご遺族の個人的な問題などに触れるのは、良かれと思って伝えたことでもご遺族を傷つける可能性があるためです。
たとえば、故人が大往生で亡くなったとしても「長生きできて良かったですね」「100歳まで生きるなんて素晴らしいことですよ」などの発言は、あまりにも軽すぎてしまいます。
悲しみに寄り添う心からの言葉が求められますので、相手の気持ちに配慮した表現を心がけましょう。
また、故人を偲ぶ言葉に心がこもっていれば、無理に励まし過ぎることは避け、今の悲しみに寄り添う言葉を大切にすることが必要です。
こちらは、葬儀・通夜で控えるべき表現です。
避けるべき 話題・表現 |
理由 | 例 |
死因を尋ねる | ご遺族の心情を傷つける可能性があるため | 「どうして亡くなったのですか?」 「何が原因だったのですか?」 |
相続などデリケートな話題 | プライバシーの侵害と受け取られることがあるため | 「ご遺産はどうなりますか?」 「今の家は売るんですか?」 |
長話や冗談など不適切な雑談 | 厳粛な場にふさわしくないため | 「今日のニュースで…」 「この前、〇〇さんに会って…」 |
励ましすぎる表現 | ご遺族の悲しみに十分寄り添えていないと思われる可能性があるため | 「早く元気を出して!」 「悲しんでばかりだと、〇〇さん(故人)も浮かばれないよ」 |
未来を表す表現 | 今の悲しみを軽視していると受け取られることがあるため | 「次はもっと良い出会いがあるよ」 「来年は良いことがあるといいね」 |
批判的な表現 | ご遺族の心情を傷つける可能性があるため | 「もっと早く病院に行っていれば…」
「生活習慣が悪かったのかしらね」 |
故人の人柄や人生を否定する表現 | 葬儀は故人を偲ぶ場であるため | 「苦労ばかりの人生だったね」 「人付き合いが苦手で孤立してたね」 |
また、他にも葬儀では使ってはいけない「忌み言葉」があります。次に詳しくご紹介いたします。
「忌み言葉」とは、不幸や不吉を連想させる言葉です。葬儀という厳粛な場で使用する際には、避けるべき表現があります。
たとえば、「死ぬ」や「殺す」「切る」「別れる」といった死を連想させる直接的な表現は、忌み言葉とされ葬儀の場では使用しないのがマナーです。
また、宗教によっては忌み言葉となる表現もあるため、それぞれの文化や信仰に配慮し、言葉選びに注意を払いましょう。
忌み言葉 | 理由 | 例 |
直接的な表現 | 死や不幸、不吉なことを連想させるため | 死ぬ、殺す、切る、別れる、切れる、切る、離れる、落ちる、衰える、枯れる、消える、亡くなる、急死、他界
(言い換え例) |
重ね言葉 | 不幸が繰り返されることを連想させるため | 重ね重ね、度々、繰り返し、再び、また、続いて、くれぐれも、いろいろ
(言い換え例) 十分に、どうぞ、振り返りますと |
浄土真宗 | 浄土真宗では、冥途や成仏の概念がないため | 成仏、冥福、供養、成仏など一般的な仏教用語 (言い換え例) ご逝去を悼み、心よりお悔やみ申しあげます |
神道 | 神道では故人は「御霊(みたま)」として祀られるため | 成仏、冥福、供養など一般的な仏教用語 (言い換え例) 御霊(みたま)のご平安をお祈り申しあげます |
キリスト教 | キリスト教では死は復活するもので、悲しむことではないため | 成仏、冥福、供養など一般的な仏教用語
(言い換え例) 安らかに眠られますようお祈りいたします |
葬儀の場面や状況によって、お悔やみの言葉は少しずつ異なります。それぞれの場面にふさわしい言葉をご紹介します。
お通夜では、突然の悲しみに戸惑うご遺族に寄り添う言葉を選びましょう。
「心よりお悔やみ申しあげます」
「ご愁傷様でございます」
などの言葉に加え、
「こんなに突然のことで、まだ信じられません」
「どうか無理をなさらずに、ご自愛ください」
「何かお力になれる事があればお声がけください」
と、ご遺族の気持ちに寄り添い、気遣う言葉を伝えるのも良いでしょう。
お通夜と同様に「心よりお悔やみ申しあげます」「ご愁傷様です」といった言葉に加えて、
「〇〇さんは、本当に素敵な方でした」
「どうぞ支え合ってお過ごしください」
と故人の素晴らしさやご遺族への励ましを込めた言葉を贈りましょう。
香典をお渡しする際は、
「ご霊前にお供えください」
「心ばかりではございますが、どうぞお受け取りください」
といった言葉を添えて丁寧にお渡ししましょう。
焼香の場面では、ご遺族に向けて深くお辞儀するだけでも、十分お悔やみの気持ちを伝えられます。
葬儀が終わった後は、心身ともに大変疲れていらっしゃるご遺族が多いです。
そのため、声をかけるタイミングは、葬儀当日ではなく翌日以降が望ましいでしょう。無理に話を広げず、シンプルで心温まる言葉で気持ちを伝えることが大切です。
「この度は、本当にお疲れさまでした」
「どうか無理をなさらず、ご自身のお体を大切にしてください」
などの言葉に加えて、
「もし、なにかお力添えができることがあれば、遠慮なく仰ってください」
「私にできることがあれば、いつでもお知らせくださいね」
と、ご遺族への思いやりを込めた言葉も添えましょう。
お悔やみの言葉は、故人との関係性によって伝え方が変わります。実際にこんな言葉をかけたよという例をご紹介いたします。
友人や知人に対しては、形式ばった言葉ではなく、相手の気持ちに寄り添う言葉を選ぶことが大切です。
ただし、どんなに仲の良い関係であっても、あまりカジュアルになり過ぎず、丁寧さを持ちながらも心を込めた言葉を選びましょう。
「突然のことで驚きました。辛い時に連絡してくれてありがとう。心よりお悔やみ申しあげます」
「今、どんなにお辛いことか、お察しします。無理せず、身体を大切にしてくださいね」
「あなたの大切な人を失って、心が痛みます。私にできることがあれば、何でも言ってくださいね」
友人のご両親など、亡くなった故人と面識がある場合は、
「〇〇さんは、いつも笑顔で優しく迎えてくれて大好きでした」
「〇〇さんの穏やかな性格と、素敵な人柄を忘れません」
など、故人の人柄や好きだったところを付け加えると、より寄り添ったお悔やみの言葉になります。
親戚へのお悔やみの言葉は、年齢や関係性に応じて、敬意を込めながらも心のこもった表現を使います。特に年配の親戚には、より一層丁寧で心のこもった言葉を選びましょう。
「この度は心よりお悔やみ申しあげます。〇〇さんの優しい笑顔が今でも思い浮かびます」
「〇〇さんのご逝去をまだ信じられません。皆さまの悲しみを思うと、胸が痛みます」
さらに、故人との具体的な思い出を交えた言葉を添えると、より温かく伝わります。
「〇〇さんには、小さい頃から可愛がっていただき、感謝しています」
「出産祝いに〇〇さんに手作りしていただいた〇〇は、今も大切な宝物です」
など具体的なエピソードを交えることで思いが伝わりやすくなります
職場の同僚には、ビジネスマナーを守りながらも、心を込めて気遣いを示す言葉を選びましょう。
特に、仕事復帰を急かすような言葉は避け、配慮を大切にしてください。
「この度は、心よりお悔やみ申しあげます」
「〇〇様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます」
「仕事のことが気にかかると思いますが、無理なさらず、ゆっくりとお過ごしください」
「今はお別れの時間を大切にしてください。お手伝いできることがあればお知らせください」
など付け加えましょう。
上司へお悔やみの言葉を伝える際は、敬意を持ち、同僚へ伝える際と同様に適切なビジネスマナーに適した丁寧な言葉を選びましょう。
「突然のことに本当に驚きました。心よりご冥福をお祈り申しあげます」
「ご家族の皆様に心から心よりお悔やみ申しあげます。何かお手伝いできることがあれば、お申し付けください」
また、
「大変でしたね」「お気の毒です」「ご苦労様です」
などの言葉は、上司には適切ではありません。社会人としての品格が問われる場面であることを意識しましょう。
お客様にお悔やみの言葉を伝える際は、適切な距離感を保ち、礼儀正しい表現を用いることが大切です。
「心よりお悔やみ申しあげます」
「このたびはご愁傷様でございます」
など、シンプルな言葉でお伝えしましょう。
ただし「言葉遣い」だけに囚われてしまうと、業務的な印象を持たれてしまうこともあります。
以下は、葬儀業界で働いて2年目の葬儀屋さんがお客様に「表面上の言葉遣いはやめて」と言われた体験談です。
”専門用語も覚え、言葉遣いもある程度は習得し業務にあたっていた2年目。あるお客様にこう言われました。
「表面上の言葉遣いならやめてくださいね。仕事をやらされている感が好みではないので。」
すなわち、心から接していないマニュアル対応と見透かされたわけです。言葉が出ませんでした。”
引用先:登戸の杜
言葉遣いの不安を抱えていましたが、その後、住職からの助言がきっかけで「自分の言葉」で接することの重要性に気付いたことが書かれています。
”確かに『個性のない自分の言葉』でした。マニュアルで覚えた機械的な言葉ではお客様によっては全く響かないわけであります。
巷でもそう感じる店員さんいますよね。正しくそれだったわけです。
住職からの『個性』と『自分の言葉で』この助言は私の気持ちを楽にしてくれました。
この日を境に自分らしくを心がけ業務にあたることになります。難しい表現は避けて専門用語もわかりやすく。そして、何よりお客様の立場に立って。こんなことを強く意識するようにしました。”
引用先:登戸の杜
もちろん、最低限のマナーやマニュアルを守ることは大切ですが、お客様に心から寄り添った言葉を選ぶことで、本当の意味での「お悔やみの言葉」を伝えられるでしょう。
葬儀で心に残った言葉をご紹介いたします。
いずれも決まり切ったフレーズではなく、心から故人を弔い、ご遺族の悲しみを少しでも和らげようとする気持ちが伝わってくる言葉です。
息子が亡くなった事を知る友人が
— mam0709 (@mam07092) February 3, 2025
「何て言葉をかけていいか、何回も考えてみたけど、私にはその苦しみはいくら想像してもわからなくて、結局何も出来ないってことしかわからなかった」
と泣きながら話をしてくれて
慰めの言葉は逆に傷がつくことも多いから
今はそうゆう優しさがすごく有難い
今日の葬儀の時の和尚さんのお言葉でとても印象に残った言葉。
— しぃ(shiii) (@shiii2305965521) October 21, 2024
『歩く』とはただひたすらに歩く、スタスタ歩くとかじゃなくて『少し立ち止まりながら歩く』とゆう意味合いの漢字だそうです。
立ち止まってちょっと考えたりしながら人生を歩む。
心にスッときました。
樹木希林さんの葬儀で、娘さんの「不在の父の重すぎる存在」とゆう言葉が印象に残っている。
— ヤットポット (@yattopot) October 2, 2018
「君が忘れがちなのであれば いちいち記憶に残る種蒔く」
— 青藍 (@seiran3104) April 15, 2023
今は種をまく…という言葉がお気に入りなんですね。
種をまく…というと安倍さんの葬儀の際の昭恵さんの
「本人なりの春夏秋冬を過ごし種をいっぱいまいた。それが芽吹くことでしょう」
という言葉が印象に残っています。
残った親族で献杯!1か月前のひいばあちゃん100歳祝いの銀杯で回し飲み。めでたい葬式やったって言葉が印象的やったなあ、涙より思い出話に花を咲かせたいい葬儀やった
— まるが (@maruga_touhou) March 23, 2020
最後に、著名人による有名な弔辞をご紹介いたします。
形式的な言葉を繋いだのではなく、心から故人を失ったことへの悲しみと敬意が込められています。
”蜷川さん、悔しいでしょう。悔しくて泣けてくるでしょう。僕らも同じですよ。
もっと一緒にいたかったし、仕事がしたかったです。
こんなにもたくさんの先輩方、同志の方々が来てますね。
蜷川さんからの直接の声はもう心の中でしか聞けませんけれども、
蜷川さんの思いをここにいるみんなでしっかりと受け継いで頑張っていきたいと思います。
気を抜いたら、バカな仕事をしたら、怒ってください。
1997年にあなたは僕を生みました。くしくも昨日は僕の誕生日でした。
19年間、苦しくも…まあ、ほぼ憎しみしかないですけど、蜷川さんに対しては。
本当に最高の演劇人生をありがとうございました。蜷川さん、それじゃ、また。”
引用先:藤原竜也さんから蜷川幸雄さんへの弔辞抜粋
”あなたはすべての人を快く受け入れました。
そのために騙されたことも数々あります。金銭的にも大きな打撃を受けたこともあります。しかし、あなたから後悔の言葉や、相手を恨む言葉を聞いたことがありません。
あなたは私の父のようであり、兄のようであり、そして時折見せる、あの底抜けに無邪気な笑顔は、はるか年下の弟のようでもありました。”
引用先:タモリさんから赤塚不二夫さんへの弔辞抜粋
”弔辞 志村、ひどすぎるぞ、おまえ。
一番若いおまえが俺たちを差し置いて天国に行っちゃうなんてなあ。
まだ、俺たちと一緒にやらなきゃならないことがたくさんあっただろ。それを勝手に一人で先に逝っちゃうなんて、おまえはバカだよ。
天国の長さんも、まさか、おまえが最初に来るなんて思ってなかっただろうな。ビックリしたと思うよ。
長さんの次は高木ブーだと思っていたもんな。でも、久しぶりに二人っきりでいろんな話ができるから、長さんも喜ぶんじゃねえかな。
まあ、いずれそう遠くないうちに俺たちもそっちに行くと思うから、それまで長さんと酒でも酌み交わしながら、ドリフの新しいネタでも考えといてくれよ。
5人がそっちに全員集合したら、そっちのお客さんを大爆笑させようぜ。約束だぞ。じゃあ、それまでゆっくりと休んでくれ。大好きな志村へ”
引用先:加藤茶さんから志村けんさんへの弔辞抜粋
お悔やみの言葉は、単なる形式的な挨拶ではなく、故人を偲び、ご遺族の悲しみに寄り添う心を伝える大切なものです。
特に葬儀やお通夜では、適切な言葉を選び、忌み言葉や不適切な表現は避けましょう。
よく使われるシンプルな言葉だけでなく、相手の気持ちに寄り添った一言や思い出話などを付け加えることで、より深く弔意を伝えることができます。
また、お悔やみの言葉は、必ずしも気の利いた言葉や慰めを使う必要はありません。頭を深く下げるだけ、心から「お悔やみ申しあげます」「ご愁傷さまです」の一言を心から伝えるだけでも、気持ちは十分伝わります。
大切なのは、故人とご遺族の気持ちを尊重し、心からの弔意を示すことを忘れないようにすることです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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